秋の冷たい雨は、涙の匂いだね。
心にしとしとと降る、罪の色だね。
小鳥が巣から見上げる空は
小鳥の瞳にうつって盲目になる。
私のため息は昇って霧になる。
真っ白な人形の手を濡らして
あぁ、体温はどこへ。どこへ行くの。

寒さに震えて忘れたあなたを思い出そうとする凍えた人形がひとつ今日も･･････

鍵盤をタップタップ。
聞こえる音は遠い世界。
ピアノと私の間
ピアノと鼓膜の間
鼓膜と脳の間
薄い膜で塞がれてる。
微妙に霞んで歪んで、聞き辛い。

正しいのはピアノの音?声帯の震え?それとも
脳の認識が間違っているのかしら?

狂った心に正しい音は滲みていかないのかしら?

音のない雨が降りしきる中
落ちていた白いものは
形といい大きさといい、
真っ白な心臓のようでした。
もちろん、動かないけど。

私の心臓は今どこにあるのかしらと
ぼんやり考えて歩く
ある雨の夜。

昔と変わっていませんでした。

私もきっと変わっていない。

だからやっぱり戻りはしない。

懐かしむだけ。


過去だから。

風の強い日は私を混乱させる
私を眠りという逃避行から引き剥がし
氷の海に放り投げてしまうのだ

冷たい体を持て余して
眠りからこれ以上遠ざかりたくないのに
それでも必死で暖めるのはたった自分だけで
風の音は現実という悪夢
私に思い知らせるように


甘い甘い毒を盛って
深い深い闇に堕として